ブランド

ブランドというと何か華やかな印象がありますが、それが外発的に貼り付けるようなイメージだと問題があります。ブランドはその組織が培ってきた活動の歴史と一体で、内発的に起るイメージです。最も、それが組織内部の論理だけで留まっているものではなく、ブランドを決定づけるものは、顧客が受け取るイメージです。

ドラッカーはコミュケーションをするには受け手の言葉を使うと言いましたが、顧客の持つ自社のイメージがどのようなものか、言葉では表されないものを認識する必要があります。そのイメージが自社が考える自社のイメージと一致しているか、ずれがあるかは問題です。
人間関係においても自分が他人からどう思われているかは意外とわからないものです。どう思われたいかとどう思われているかは当然違います。

人が常に成長し続けなければならないように、ブランドも成長し続けなければ陳腐化してしまいます。ブランドはけっして変わってはいけないものと、常に活力を与えるために、イメージの更新が必要です。その時代にあったそのブランドの役割があるはずです。ブランドを構築してから不変であるものを持ちながら、時代とともに変化し続けてきたコカ・コーラのようなブランドはわかりやすい例です。

わたしはアーカーの「ブランド論」を参考にしています。また、ドラッカー、コトラーの理論からブランドについて考えてみたいと思っています。この三者は影響し合っています。ブランドは経営やマーケティングと一体です。そして、アーカーはブランドを資産として考えるべきだと強く主張します。「ブランド論」ではブランド・エクイティという章を最初に持ってきています。

ブランド・エクイティ
ビジネスは目的と目標、戦略と戦術という言葉が明確に分けられている。目的は、その企業が実現したい姿であり、使命。目標はそれを実現するための指標です。戦略は、目的のための施策であり、戦術は戦略遂行のための具体的な手段です。ブランドは目的と戦略のなかで語られるべきです。そして、そのブランドは資産として経営において管理されます。
ブランドはまず認知されなければ始まらない。また、顧客は認知したものを好む傾向がある。
さらにブランドは連想を与えられる。パタゴニア=環境問題への貢献など。
そして、ブランドロイヤルティ。顧客との持続的な関係で、ブランドへの愛着、忠誠の意味になります。

ブランド・ビジョン
次に重要なこととして、ブランド・ビジョンがあげられています。その前に企業にはビジョン・ミッションがあります。ブランド・ビジョンは当然それと関わりがあります。ブランドは企業のビジョンがイメージとして体現されたものと言えます。逆にブランドはそのビジョンを言葉で明確に説明できることで力強いものになり、顧客にエモーショナルな働きかけをします。ブランド・ビジョンは一言で言い表せるエレメントを多数、内包しています。そのなかでも、いくつかをコア・ビジョン・エレメントとして中心に据えます。その周りに、拡張ビジョン・エレメントが補完しています。

ブランド・パーソナリティ
さらに、ブランドを際立たせるものとして、ブランド・パーソナリティがあります。
ブランドと顧客の関係性を考えた時、人と人のような感情をふまえた関係性になったとき、よりわかりやすくなります。ブランドを擬人化したような、人格を伴ったパーソナリティを持たせることで、より、顧客のポジショニングを明確にできます。ハーレーダビッドソンを考えた時、どのような人格を思い浮かべるでしょうか。そこには男らしくたくましいワイルドなパーソナリティがあることは自明だと感じられるでしょう。

レレバンス
ブランドをエイクティとして位置づけ、ブランド・ビジョンを明確にし、ブランド・パーソナリティによって個性ある人格を与えることで、顧客との心理的結びつきを強くします。この関係性をレレバンスと言います。
ブランドはレレバンスをいかに強くするかということに成否がかかっています。レレバンスは時代とともに揺れ動き、放っておけば陳腐化します。顧客の中に不変の価値を浸透させ、維持しながらも、常に新しく活力を与え続ける必要があります。ブランドは常に成長し、拡張し続ける存在です。ここでも、ブランドはマーケティングとイノベーションと一体となって戦略的に扱われるということを再認識させられます。イノベーションをブランド化し、マーケティングに組み込みます。

ブランド・ポートフォリオ
企業は複数のブランドを持つことになります。
それらは、中心となるマスター・ブランドに結びつけ、管理する必要があります。そうすることでブランドは長期にわたり活性化し続けます。
複数のブランドを持つことは、また、リスク分散のためにもなります。一つのブランドに瑕疵が生じても、他のブランド全体が致命的なダメージを負うことを避けことができます。
ブランド・ポートフォリオももっと積極的な意味としては、サブブランド同士のシナジー効果を得ること、そのブランドがブランドたる品質を保証するエンドーサー・ブランドの支援を受けてサブブランドを展開することで、ブランド全体を活性化することができること。ブランド・ポートフォリオというしくみをつくることで、ブランドの管理を徹底的できることがあります。

最後にアーカーの『ブランド論』の構成を確認しておきます。
「無形の差別化をつくる20の基本原則」という副題がついていますが、まず、大きく5つの部に分かれています。これについてよく考えることが有益だと思います。
第Ⅰ部 【基本】資産としてのブランド
第Ⅱ部 【実践】ブランド・ビジョン
第Ⅲ部 【活性】ブランド優位性
第Ⅳ部 【強化】ブランド・レレバンス
第Ⅴ部 【拡張】ブランド・ポートフォリオ

第1章 ブランドは戦略を左右する資産である。
第2章 ブランド資産には真の価値がある。
第3章 ブランド・ビジョンを生み出す。
第4章 ブランド・パーソナリティでつながる。
第5章 組織とその大いなる目標が差別化をもたらす。
第6章 機能的便益を超えて。
第7章 競合をイレレバントにする”マストハブ”。
第8章 イノベーションをブランド化する。
第9章 サブカテゴリーをフレーミングする。
第10章 ブランド構築の着想をどこから得るのか。
第11章 顧客のスイートスポットに注目する。
第12章 デジタル-ブランド構築の必須ツール。
第13章 一貫性が勝利をもたらす。
第14章 社内向けブランディングがカギとなる。
第15章 ブランド・レレバンスを脅かす三つの要因。
第16章 ブランドに活気を与える!
第17章 ブランドにはポートフォリオ戦略が必要。
第18章 ブランド拡張の方向性を見極める。
第19章 垂直ブランド拡張のリスクとメリット。
第20章 ブランド構築を妨害する組織内サイロ。