二回目の哲学カフェでの議題は「愛について」でした。
愛については当然多くの人が関心を持っているのですが、わたしはそれが本質的に自発的なものなのかと訝しく思うことがあります。
というのは、あまりにもわたしたちは子どもの頃から愛について、様々な人から諭され、物語を聞かされ、メディアでも繰り返し愛についての宣伝を浴びてきたからです。人を愛す、愛されるということのすばらしさ、その大切さ、人生の喜びでもあり、苦悩もあり、道徳でもある。何か波乱万丈なドラマもイメージするし、穏やかな家庭のイメージもある。この漠然とした魅力に満ちた愛について、多くの人が囚われているようにも思うのです。
愛という感情があることはもちろん否定しません。母親の子どもへの愛は強いものです。本能的なものがあります。子どもにとっても、この母親からの愛は、生命の維持に関わります。また、社会はこの母親の大きな愛を賛美し、それはあって当然だというふうな圧力となる場合もあります。それが一人の女性であり人間である母親を苦しめることもあります。子どもを愛することができないと感じた母親は罪悪感をいだきます。しかし、愛は何より強制されるものではないとわたしは思います。社会が思う母親から子どもへの絶対的な愛は、一つの幻想でもあり、真実でもあります。
子どもは成長の過程で、自分というものを発見し、自己愛に目覚めます。また、両親や親類、保育園の先生など、他者への愛にも目覚めます。しかし、自己愛が一番です。子どもの自己愛は、生きるということと同義です。食べること寝ること、遊ぶこと、すべて、不可欠であり、自己愛によって守られています。これは生きることの基礎です。この基礎は大人になっても本質的には変わらないのですが、自己愛を否定し、貢献するように社会に求められる場合があります。自己犠牲的になります。自己犠牲は宗教的な意味で、重要な考えですが、まずは、自分を生かさなければ、何もはじまりません。その中心に自己愛があります。これは自分本位であったり、わがままとは違います。大人は子どもに繰り返し、わがままを止めなさいと叱ります。しかし、自己愛なのかわがままなのか、見極めなければなりません。わがままは自己愛ではなく、他者や他のモノに意識が向かっています。刺激に反応しているだけです。
依存と愛は違います。子どもがわがままになり、自分を見失い、外界の刺激へ依存した状態になります。これと同じように、母親も子どもに対する愛が、自分自身を支えるための依存になる場合があります。これも母親が自己を喪失した状態です。自己愛がなく、自己を喪失した状態では正しく相手を愛することができなくなります。依存的な愛になってしまうのです。愛はまず、自分自身が一人で生き、自分自身を愛することができ、相手に与えることができるだけの愛を持っていなければなりません。
人間の欲望は肥大化していきます。今の世界を見渡せばそれはあまりにも明らかです。欲望は愛ではありません。しかし、本来の欲望は大切な反応ではあります。お腹がすかなければ、よく食べることはできません。食べなければ生きていかれません。そうではなく、欲望の肥大が問題なのです。これはアディクションです。アルコールや麻薬、ギャンブルに依存することを誰も愛だとは言わないでしょう。依存症は避けるべきです。それが社会的に悪とされるものでなくてもです。自分の子どもへの依存症になっていないでしょうか。パートナーへの依存症になっていないでしょうか。自分自身への依存症になっていないでしょうか。
まず、自分自身を愛によって充実させることができれば、それを他者へ向けることができます。関係が深い人よりも、かえって関係が薄い人へ愛を贈ったほうが楽な場合はあります。ボランティアや寄付などがそうです。それは自己愛のためかもしれませんが、善行です。それによって救われる人がいます。もし、愛する関係性も良い人がいるなら、その人に愛を与えればいいでしょう。これは幸せなことです。しかし、エーリッヒ・フロムの言うような「愛の技法」を高めていくなら、嫌いな人へも愛を与えることができるかもしれません。汝の敵を愛せと聖書には書いてあります。仏教では慈悲ということを言います。すべての生きとし生けるものは同じです。敵も見方も、好きも嫌いもありません。生命でしかありません。その嫌いという感情は、ある衝動、反応に過ぎません。あなたの本質とあなたの感情は同じではないのです。しかし、このようなことが可能でしょうか。わたしにはまだわかりません。しかし、これを実現できれば、世界は平和になるのかもしれません。本当に自己愛を持とうとするなら、感情を超えて、愛の与える活動をしていくことが求められます。これは避けられないように思います。この問題をわたしは今、考えていて、今後も考え続けるでしょう。かたちだけそうしてもだめなのです。心からできるかどうかが問題です。
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