ビジョンについて

わたしはロゴデザインをしているうちに、企業のビジョンについて考えるようになりました。ロゴはビジョンを反映するものでありたいと思うようになりました。

ビジョンとは、その企業が実現したいと願う社会の姿を思い描いたものです。その実現のためにすべての活動が判断され進められていきます。ビジョンを実現するための企業の使命に相当するものがミッションです。

最も企業にとっての当面の関心事は利益を上げることかもしれません。しかし、利益はビジョンを実現するための必要条件なのです。本質的には利益のために仕事をしているわけではありません。

逆に言うと、ビジョンは利益を上げる絶対条件ではありません。ビジョンがなくても利益を上げている企業はたくさんあります。投資での利益にビジョンはなじまないかもしれません。

ビジョンを持つということは、詰まるところは、社会での存在価値であり、その責任であると思います。それを引き受けるかどうかは、その人の倫理観や情熱、人間性に根ざしているでしょう。そういうものはビジネスに絡めたくないという方は、ビジョンを持たなくて構わないでしょう。

では、ビジョンを持つ起業家、経営者はなぜビジョンを持ちたいと思うのでしょうか。

それにはその人の人生と深い関わりを持った想いがあります。

アップルコンピュータの創業者スティーブ・ジョブズは創業時、いわゆる経営理念のようなものはもっていませんでしたが、一人ひとりに操作が簡単な美しいパーソナルコンピュータを持たせるというビジョンを明確に持っていました。むしろ言葉を掲げる必要がないほど、ジョブズの言動や製品自体が熱く語っていました。そこにある種の人々は宗教的と言えるほど熱狂しました。そして、アップルコンピュータはそのビジョンを達成し、世界を変えました。ライバルのMicrosoftがシェアでは一位ですが、アップルによってはじめてパソコンやスマホが人間らしさというものを持ち得たのではないかと思います。

もう一人の起業家にパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードをご紹介したいと思います。パタゴニアはご存じの方は多いかと思いますが、アウトドアのブランドです。

シュイナードはもともと経営などに興味を持った人物ではありませんでした。自然を好み、ただただクライミングに情熱を注いでいました。クライミング用のピトンの製造が評判になり、仲間と製造販売するようになりました。もともとパタゴニアにビジョンがあったわけではありません。しかし、パタゴニアが経営不振に陥ったとき、自分たちの原点に立ち返り、ビジョンを策定しました。それは利益重視でも顧客重視でもなく、地球環境のためにあるというものでした。以下がそのビジョンです。「最高の商品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」これは口先だけではなく、パタゴニアの存在価値はそこにあると本心から思ったのではないでしょうか。そして、そこにこそ、顧客に共感いただけるのではないかと思います。

この二つの偉大な企業のビジョンのあり方から考えると、ビジョンとは額に入った短い決意表明のようなものにとどまりません。むしろ、額の中に飾っておくものでなく、自らの内面深くに浸透し、全存在で体現するようなものです。企業のあり方、トップのあり方そのものが、ビジョンと直結しているといったものが真のビジョンなのだと思います。

arcmirror 齋藤ともよし
ホームページ https://arcmirror.com/
Instagram
https://www.instagram.com/arcmirror_tomoyoshi
お問い合わせフォーム
https://arcmirror.com/infomation/